この人に聞きたい:第23回(週刊冷食タイムス:05/11/22号)
経営現況と夢を語る
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アクリフーズ
社長
羽田 誠一 氏
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経常益率5%に挑戦
生産基盤の整備も進める
心から願う事は実現する
冷凍食品新聞協会(本紙など十六社加盟)は羽田誠一アクリフーズ社長との懇談会を十六日昼東京駅ルビーホールで開催した。羽田氏は、今期の目標について「経常利益率5%、生産基盤の整備、カテゴリーナンバーワンの追求」などをあげ、十月までは「二ケタ増の推移だ」と説明した。上半期の実績や今後の展望、業界への要望などを語った。
新創業から3年間を振り返って
(1)新創業にあたり「創発」を掲げた。すべてをリセットして新しい会社を立ち上げる、という意志表示であり、まず全員の意識改革を図った。スタートにあたりニチロの田中龍彦社長から熱いメッセージがあり、大いに勇気づけられた。
(2)再生・復活への基盤整備は平成十五年の五月から十月に向けて行ったが、最大の功労者は従業員であり、彼らの奮闘なくして現在の基盤はない。自主性を重視し、次第に「自分の会社」の意識が社内に醸成されてきた。群馬工場では今年を初年度にする生産体制整備をスタートし、今期七億円かけてエネルギー源を整備、来期以降も順次整備を行う。
新創業の十四年度は売上高二百二十九億円で、負の処理があって経常利益は十五億円の赤字。しかし十五年度は二百四十七億円、経常利益五億円で経常利益率2%を確保した。当社は「弱者の戦略」を用い、商品戦略はピザ、グラタン、米飯、コロッケ、野菜類など得意の五カテゴリーに集中している。
(3)強固な経営基盤の確立をめざす。十七年度の目標として経常利益率5%確保、生産基盤の整備、カテゴリーナンバーワンの追求などをめざしている。商品開発を強化し、ポテンヒットでもいいからヒットを打ち続けたい。そして従来の五本柱にもう一本加えたい。
人材育成も重視。手作りのカリキュラムで各階層の研修を逐次実施している。市販用と業務用の比率は八対二で、片肺飛行の状態。そこでニチロからベテランに入ってもらうなど業務用の市場開拓に全力を傾けている。
上期実績と通期の業績見通し
今期上期は売上高百四十三億円で前年比17%増、経常利益五億四千万円、当期純利益は十一億六千万円。内訳は市販用が18%増の百二十二億円、業務用が17%増の二十一億円。通期では前年比16〜17%増の三百十億円をクリアする見通し。経常利益は十四億八千万円の予定だが、原料高などがあり十四億円をクリアできればとみている。十月は二ケタの伸びで推移している。市販用の当社シェアは十六年の4・3%が十七年に5・3%へと上昇、ニチロの7・5〜6%に肉薄したい。
めざせ五百億円羽ばたけ千億円
めざせ五百億円、はばたけ一千億円を合言葉に挑戦している。当面は雪印時代のピークである売上高三百七十億円への到達を再生の目標にしている。あと二年で悲願達成をしたい。
中期目標は(1)商品開発力を強化し、付加価値に磨きをかけていく(2)「大事な人に食べさせたい」というブランドビジョンを徹底(3)フローズンのイノベーターとして企業価値を高める(4)将来を見据えて中国事業の展開を図る。具体的には手作りピザの輸入にとどまらず中国国内での販売展開も視野に入れていく。
ミールソリューションの代表格
チルド食品分野の観点から冷凍食品をみると課題がみえてくる。冷凍食品はミールソリューションの代表格。欧米に比べて国民一人当たりの消費量がまだ少なく、発展性を秘めているといわれるが、現実は四割、五割引を多発、冷凍食品は安いものという認識を植え付けている。冷凍食品の価値は簡単で手軽、セーブタイム、セーブマネーである。冷凍食品本来の価値をもっと訴求すべきである。
それには末端市場に向けて情報発信を行うことが必要。手段としては食シーンの提案、料理方法、昼食、夕食への提案、規則正しい食の提案などが可能。中高年は料理しない世代といわれる。かれらの外食と内食の分岐点の鍵を冷凍食品がにぎっている。もっと流通との情報交換をしながら生きた情報発信を行っていくべき。
メニュー提案や試食などを行えば、価格の安さで買う客が味や商品で判断するようにもっていけると思う。冷凍食品の競合相手は冷凍食品ではなく、チルド食品だということを認識すべきだ。
日本冷凍食品協会では「マイナス一八度C」を訴えるが、これは消費者へのメッセージになっていない。もっと鮮度感やおいしく食べるための料理法などを訴え、客のハートを打っていかねばならない。
当社ではピザに絞って十二月に関連商品とのコラボレーション、POPを使用した販促を展開する。
私のワンフレーズを紹介すると、「毎日がプロの味」「ご存知ですか冷凍食品の正しい使い方」、「冷凍食品のおいしさ直行便」。より充実した食生活の実現に向けて生活を誘導していくのが冷凍食品の使命。
ある大手企業の社長の「心の底から願うことは必ず実現する」ドラッカーの「変化の先頭にたたないと生き残れない」などは私自身の信条でもある。この三年間は「有志創路」、つまり「意志のあるところに道がある」という指針で取り組んだが、これからもこの精神で企業価値の向上に取り組んでいく。