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この人に聞きたい:第37回
(週刊水産タイムス:06/03/28号)

極洋 福井清計社長に聞く “攻めの経営”展開中
組織改編で水産と食品融合

(株)極洋 代表取締役社長 福井 清計  氏  

 極洋は中期経営計画に則り“攻めの経営”を展開中だ。四月には魚種別四部、カテゴリー商品別三部に新編成し、海外事業部を合わせた八事業部体制で、これまで進めてきた“水産と食品の融合”をひとまず完結する。今期は増収ながら目標数字に届かず、一月に修正を余儀なくされたが、福井清計社長は「攻めの経営は今後も貫く。来年の七十周年には記念配当を出したい」とあくまで前向きな発言が目立った。(本紙社長・越川宏昭)

冷凍寿司を欧州市場へ、女性の視点 重要視

――月末に業績予想を修正。第3四半期まで売上高はわずかながら伸びているが、目標に比べると足りなかったということか。

福井 まあまあの数字だと思うし、一生懸命頑張ったと思うが、納得はしていない。第3四半期で売上高千百九十七億円(前年同期比0・2%増)、営業利益三十億六千二百万円(2・0%増)、経常利益二十八億七千九百万円(4・6%増)、四半期純利益十六億八千五百万円(61・3%増)。善戦健闘と言っていいだろうが、目標に比べると下回っている。売上高は千六百億円を千五百三十億円、経常利益は三十八億円を三十一億円、当期純利益は二十一億円を十七億五千万円に修正した。

――本社は昨年四月に水産加工部、海外事業部を新設したが、この四月に事業体制を魚種別、カテゴリー食品別に再編成する。

福井 これだという物が残っていない。今でも函館が「ニチロの町」と言われるのは嬉しいが、当の函館市民はどうか。ニチロに愛着はあっても、感謝まではないでしょ。残っているのは顕彰碑くらいかな(笑い)。

――3月も中旬、今期も見えてきた。

福井 単純で分かりやすいと思う。水産加工第一部が南北凍魚、たこ・いか、第二部がさけ・ます、かに、第三部がえび、第四部がかつお・まぐろ、食品関係は水産冷凍食品部、調理冷凍食品部、常温食品部の三部。海外事業部を含めて八事業部体制。水産加工一・二・三部は門田憲一常務、食品関係の三部は常務に昇格する久保光太郎取締役が担当する。水産加工第四部は須藤時廣取締役が直轄で部長を兼務する。

――久保新常務は食品分野で育った人。力強い布陣になる。

福井 極洋は全体的に五十歳前後の層が薄い。現場と本社で交代した人事もあり、ベテランをうまく活用したつもりだ。

――食品も三部体制になった。

福井 食品と水産との比率を五分五分から六対四、さらに七対三に持っていきたい。相場の影響を直接受ける水産商事は年によってブレが大きい。魚は昨年良かったが、今年は厳しいということがある。切り身という形態にした“商品”なら販売価格が安定し、ブレも小さくなる。いろいろな意味でマインドを切り替える時期にきている。

――極洋は寿司ネタで特化するなど、いち早く末端志向を意識してきた。

福井 販路の開拓は早くから取り組んできた。寿司ネタだけでなく、外食チェーンやCVS弁当にも多種多様な商品が出ている。小まめに対応するようにしてきたし、支社に一定の裁量権を与えたことも良かったのではないか。本部マターになっている大手他社の隙間を突いてきた。支社が地域の便利屋として機能しており、得意先に喜んでいただいていると思う。我々幹部もできるだけ支社に出かけるようにしてきた。手間も経費もかかり、ほとんど儲からないこともあるが、(この方針を)改めるつもりはない。いずれにしても食品業界全体からみればほんの一部に過ぎない。本格的に食い込んでいくのはこれからだ。

――極洋の持ち味を生かしたもの、特徴のある商品が求められる。

福井 大手五社の中で、極洋が強みを持っているのはかつお・まぐろだ。北洋凍魚も上位に入る。加工品ではかに風味かまぼこの「オーシャンキング」がロングセラーとなっており、えびフリッターも地道ながら安定した評価をいただいている。

――極洋にとって市販用冷食はこれからの分野。いつから本格的に取り組むか。

福井 難しいところだ。本格的に市販用に取り組むか、業務用をベースとした今の状態を深耕したほうがいいのか、会社・グループ全体として慎重に考える必要がある。私だけの判断ではなく、社内の意見も聞きながら、路線を明確にしたい。だいたい社長が「あれやれ」「これやれ」といって儲かったためしはない(笑い)。

――確かにニチレイも加ト吉もある。市販用冷食の市場で戦うのはそれほど容易ではない。

福井 市販用食品は安定生産がポイント。やるとなれば総合的に取り組む必要が出てくる。極洋が市販用冷食市場に参入する上での課題を社内で挙げているが、簡単に踏み込めないというのが実情。やるとなれば、魚に由来した商品となろうが、味の素の冷凍ギョーザのような大ヒット商品はなかなか出にくいのではないか。

――昨年は海外事業部を新設した。海外を舞台とした調達・生産・販売が今後注目される。

福井 海外は伸ばす。今のところ、米国、欧州、中国を視野に入れているが、海外事業部もまだ地に足が着いていない状態。一気には進まないが、着実に強化・拡大していく。

――欧米向けの冷凍寿司販売は極洋の特徴を生かした取り組み。寿司ネタに特化してきた経緯もあるし、他社ではまだほとんど取り組んでいない。

福井 冷凍寿司はタイの合弁会社「K&Uエンタープライズ」で生産する。既にヨーロッパや米国でテスト販売したが、評判がいい。他社から冷やかされながらやってきたが、今後の展開が楽しみだ。

――失礼だが「思っていたより、ずっとおいしい」と好評だ。

福井 コメの吟味をはじめ、凍結方法、温度管理、解凍の仕方など、真面目に研究を重ねてきた。いい商品になるのではないか。三月のボストンシーフードショーにも出したが、かなり反響があった。これから五月のブリュッセル、秋のシアル(パリ)にも出展するが、ブリュッセルには私自身も行くことにしている。

――福井社長が冷凍寿司で欧州市場に殴りこみか(笑い)。

福井 EUといっても国によって事情が異なる。アムステルダム事務所を近く現地法人化し、販売網を築き、広げていく。海外販売は今期二十億円程度だが、新年度はタイの新工場も竣工する。そう遠くないうちに百五十億円くらいまでもっていきたい。

――寿司ネタや冷凍寿司なら利益率も高い。

福井 海外事業部は足掛かりの年になる。海外事業部長の荒砥(誠氏)や専任部長の外内(真一氏)らベテランが若い頃のように奮闘している。米国、中国、タイなどの加工拠点六カ所がフル稼働すれば、そのくらいの数字になる。

――ここ数年、水産と食品の融合・強化を進めてきた一方、女性の活用も意識しているように見えた。

福井 商品開発部に総合職の女性が二人いるが、来期は五名に増える。販売でも女性パワーを存分に発揮してもらいたい。やる気のある女性を積極的に管理職にも登用したいと考えている。

――それでなくても食べ物を扱う仕事。家庭の食卓を舞台にしている以上、女性の視点を重視し、女性の力をもっと活用していい。

福井 水産加工品でも、冷凍食品でも女性の感性が大切。極洋もこれからは食品会社らしくならないといけない。今まではなかなか魚屋から脱皮できなかったが。

――来期は中期経営計画の二年目に入る。

福井 五年後に「連結売上高二千億円、経常利益五十億円」を目指してスタートした。来期といっても、もう一度初年度に掲げた数字にチャレンジするだけだ。組織も、それに伴う人事も刷新した。全社一丸となって取り組むので、見ていてほしい。

――「攻めの極洋」、その路線は継続する?

福井 もちろん。この姿勢は崩さない。今の極洋にとって守るものなどない。ただひたすらに攻めるのみだ。為替による円安、原料高騰、売場での過当競争など、厳しい内容を挙げればきりがないが、世界的に魚の需要が拡大しているのはまぎれもない事実。仕組みを変え、発想を変え、取り組みを変えていけば必ず未来は拓ける。

――来年は七十周年の佳節を迎える。

福井 ぜひ記念配当をしたい。

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