この人に聞きたい:第59回
(週刊冷食タイムス:06/09/11号)
ロジスティックは「後方支援」
機能に付加価値をつけて顧客満足を
(株)マルハ物流ネット 社長
内山 俊夫 氏
プロフィール ●株式会社マルハ物流ネット
●所在地:東京都中央区豊海町14−17 ●電話:03(5548)1281
●資本金:4億3000万円 ●従業員:約500名
●業績(マルハ連結保管物流セグメント):
平成18年3月期 売上高152億5900万円(前年比1・5%増)
営業利益21億5100万円(38・9%増)
●沿革:マルハ物流ネットが17年新日本コールド、梅田冷蔵、大洋冷凍を吸収合併。さらに18年中京冷蔵ほか2社を吸収合併。冷蔵倉庫36拠点、庫腹量54万tのコールドネットワークを形成する。
主都市を結ぶ低温倉庫ベルト
輸入貨物に対応、総庫腹量54万トン誇る
株式会社マルハ物流ネットの社長になって1年半、低温物流事業会社9社を合併した寄り合い所帯だけにまず社内言語の統一、情報の共有化、そして全員のベクトル(方向性)をあわせることに腐心してきた。初年度の06年3月期は大幅な増益を達成、順調な滑り出しをみせたといえるが、正念場はこれから。時代の要請に応えていかにスキルアップするのか。内山社長に今後の方針と決意を語ってもらった。
俗に言うロジスティクスを今様の「物流」でなく、後方支援という意味をもった「兵站」ととらえる。そうなれば保管事業も後方支援の一環としていかに寄与するかを考えるべきだ。現在の保管という単一機能では生き残りは厳しい。しかしそこにあらゆる付加価値をつけることで将来性に富んだ事業にすることができると思う。
当社が保有する冷蔵倉庫は主要都市に集中した港湾型が多く、メーカーや商社が主要顧客。食料自給率が40%というわが国の現状を考えると輸入貨物の取り扱いに最適な立地に拠点をもつ当社の強みは明らかだ。まずは既存の顧客のニーズを再認識し、物流機能の充実や新しいビジネスモデルの模索をしたい。ひいては、通関から保管、流通加工、輸配送までの一貫したサービスの提供をめざしたい。
当社はグループ9社が合併した寄り合い所帯。よほど経営トップが明確な方向付けをし、社内に徹底しないとバラバラになってしまう。そのためには情報の共有化が不可欠。経営サイドから明確な方針のもとに情報を発信し、受け取った社員が自ら考え、判断し、行動していかにフィードバックするかで企業の成長が左右される。「情報は与えないより与え過ぎるほうがよい」というのが私の基本姿勢である。
経営者として重視するのは、(1)何事も先延ばしせず迅速に決断し実行する(2)ITの積極活用。物流、顧客情報などの共有化を進め、ITを攻めに使う(3)業務の標準化。支社間の違いを明確にし、標準化すべきものは推進する(4)人材の育成、抜擢。次世代の幹部候補生に対し世間を学ぶこと、自分以外の社内の業務を学ぶこと、マナーを身につけることを求め、部下の育成にも配慮させる(5)コンプライアンス。目先の取引を失っても最優先で法令順守を重視する。
冷蔵物流業界の実態は、設備の老朽化が進み、庫腹は平成11年をピークに頭打ち。保有2工場以下の零細企業が全体の9割を占める。今後も再投資できるのは大手企業だけではないか。生存競争に生き残った企業だけが残存者利益を享受できる厳しい情勢だと認識している。
燃料価格高騰、人手不足、安全・環境規制強化など低温物流業界を取り巻く環境は厳しさを増している。平成11年から17年までの6年間、一都三県における入庫高、在庫高の推移をみると、全体的には横ばいだが、冷凍食品や農畜水産加工品などのいわゆる嵩だか貨物の比重が高まっている。その一方で冷凍食品などの回転数は低下傾向。これでは倉庫はいっぱいだが収益面で厳しいというのは当然。重量で決まる従来型の料金体系の見直しは必至であろう。そのうえで業界はさらに物流品質の向上に向けて最善の努力をしていかねばならない。
当社にとってはやり方次第でビジネスチャンスがつかめる面白い状況だと思う。主要都市の拠点をベルトにした魅力は当社の持ち味であり顧客のニーズを共有すれば、まだ事業の拡大は見込めると確信している。