この人に聞きたい:第77回
(週刊冷食タイムス:07/1/30号)
メーカーは現状を直視すべき
(株)菱食 代表取締役副社長 中野 勘治 氏
プロフィール:(なかの・かんじ)昨年10月から現職。昭和37年日本冷蔵(現ニチレイ)入社。専務を最後に平成3年ユキワ(RY前身)社長。昭和14年7月、名古屋市出身。慶応大商学部卒。
菱食(後藤雅治社長)は昨年10月1日付で子会社のアールワイフードサービス(中野勘治社長)と合併、新生「菱食」として新たなスタートを切った。合併により温度帯の壁を取り外して「顧客にとって使い勝手の良い卸をめざす」と語る中野勘治副社長に近況を聞いた。
受けた仕事は颯爽とやる
――冷凍食品の四割、五割引きは依然としてなくならない。方策は。
中野 確かに末端の安売りはどこまで行くのか、と不安になるほど頻繁に行なわれている。冷凍食品の定価に対する消費者の不信感も否定できなくなるなど弊害も出ています。しかし、私はまずメーカーに対して「現実を直視しろ」と言いたい。流通のセンターフィーや販売管理費をメーカーは見ない振りしている。我々問屋は中間流通という立場で機能を果たしており、経費・費用は確実に発生する。誰かが負担しなければならない経費から目を逸らすのはおかしい。では、誰が負担すべきか。やはりブランドオーナーであるメーカーが責任を持って負担すべきだと私は考えています。
――メーカーは「なぜ自分達が負担しなければならないのか」となる。
中野 リテールサイドも大変な競合状態にあり「言うことを聞かなければ帳合変更しますよ」と、我々に伝えてくるところもあります。つまり、体力勝負の「力仕事」が嫌ならば、「お宅はいいよ」ということ。もちろん我々としては「そうは問屋が卸さない」となります。高度成長期にはいざ知らず、21世紀には通じない。私は理に適わない「力仕事」は断り、受けた仕事に関しては颯爽(さっそう)とやると言い続けてきました。
――昨年10月菱食とRYが統合、温度帯の壁を取り払った提案営業を進めているが、その効果は。
中野 温度帯で組織を分けるのは我々の都合であって、顧客には何の関係もないこと。低温か常温食品かを選択するのは顧客であり、ユーザーの使い勝手に応じてチョイスすれば良い話。我々が押し付けるのではなく、顧客にとって使いやすい組織にするのが大きな狙い。これまでは無理に冷凍食品をはめ込んでいた部分もあるが、今は自由な発想で幅広く提案できるようになりました。(我々の力量を描く)キャンパスが大きくなった訳です。これこそが新菱食最大の意義です。
――問題はない?
中野 統合してまだ4カ月足らずですから、人の頭の中にはまだ温度帯の壁という意識が多少残っています。こうした意識の改革も私の大事な役割です。プラス、生活者のライフスタイルに近づくことが大切。不都合を改善し、常にベストフォーメーションで臨んで行きます。