この人に聞きたい:第82回
(週刊冷食タイムス:07/3/6号)
国産素材使った物作りに挑戦
エム・シーシー食品(株) 代表取締役社長 水垣 宏隆 氏
プロフィール:(みずがき・ひろたか)関西学院大学を卒業後、高崎達之助氏が創設した缶詰専門学校で製造技術を学ぶ。27歳で入社。神戸市出身、昭和15年1月生、67歳。
契約栽培のバジルを商品化
エム・シーシー食品はハイカラ神戸の味を標榜、主として洋風調理食品を得意にして缶詰や冷凍食品を製造販売してきた。水垣宏隆社長は「クォリティを高めるのが我々の使命」とし、豊かな食生活への貢献をめざす。
――先代の宏三郎さんはカリスマ性のある人だったが。
水垣 大きな存在だったし、死んで7年経った今でもなにかにつけて私に影響を与えていると感じます。
――意識することが多い。
水垣 反発心もあって一緒に行動することは少なかったですね。父は缶詰盛んな時代に、みかんもまぐろもない神戸で加工調理済缶詰にトライし、やがてミートソースを開発します。世界一周・食の探求旅行の収穫だったのです。
――その大きな存在を乗り越えたいと思っていたのでは。
水垣 父と違うことをやりたいと思い、クリームコロッケを開発しました。昭和43年です。まだ自動機械がないので機械の開発からやりました。日本初の冷凍クリームコロッケの量産化です。なにか人と違うことをやろうと思い続けていました。当社には知識探究心をもった社員が多いのですが、当社の財産は一緒に取り組んだこういった人材だと思います。
――売上高135億円、このうち冷凍食品は70億円。中小企業といわざるを得ないが、高品質の商品には定評がある。
水垣 小は小なりに、大手の原料メーカーと提携をするなど他社の技術も取り入れる努力をしています。とにかくハイクォリティーを追求するのが当社の生命線だと思います。消費者はもっと豊かな食生活を求めており、自宅でちょっと手間をかければおいしい食事が楽しめるという当社の商品ラインが受け入れられる環境になりつつあるといえます。いまはまだニッチ市場かも知れないが、団塊世代を中心に4〜5年で大きな層に膨らむと信じています。
――独創性が持ち味だ。
水垣 国産原料にこだわった物づくりに力を入れています。玉ねぎ、黒豆、バジルなどだが、なかでもバジルは県内の農家で契約栽培をしている。新鮮で安全な原料を使い、ソースづくりに生かしています。地産地消の理念にも沿うものです。
――地元神戸発のユニーク商品もある。
水垣 「ぼっかけ」ですね。すじ肉とこんにゃくを醤油で煮込んだものです。ご飯にぶっかけたらおいしい。お好み焼きの材料やうどんの具としても好評です。こんにゃくは熱に強いものを特注して作らせています。
――最近、気をつけていることは。
水垣 この5年くらいで当社の作り方や商品を理解していただけるお客様が増えている。10年前に認めてもらえなかったのは当社の努力が足りなかったからです。カリスマ経営者と私の違いは自己否定をいとわないことです。自己過信せずにマーケットインの発想を加え、市場の声を聞いて物づくりをする喜びを今味わっています。