この人に聞きたい:第97回
(週刊水産タイムス:07/06/25号)
鈴木博晶社長に聞く
鈴廣 社長 鈴木 博晶 氏
必要とされるかまぼこへ
小田原かまぼこをクローズアップ
――「かまぼこの里」の見所はどのようなところでしょうか。
鈴木 見所は盛りだくさんにしましたが、小田原かまぼこをクローズアップしたいという思いが一番強いですね。自らが手がける店ですから、わがままいっぱいに表現しました。
――かまぼこバーや職人工房など、目を引くブースがあります。
鈴木 それぞれ新しい試みです。かまぼこバーでは、高級かまぼこをビールや日本酒などの飲み物と味わうことができます。“かまぼこソムリエ”が話す蘊蓄(うんちく)を聞いたお客様が、かまぼこファンになってくださればと期待しています。職人工房でも、ちくわをつくりながら説明をするわけですから、知識とトークが重要になってきます。教材を配ったり特訓の時間を設けたり、職員は努力をしてきました。みんな自分の仕事に誇りを持ってやってくれていると感じますね。
――職人は今まで工場で製品を作ることだけに集中してきました。
鈴木 これからは工場で黙々と作業するだけでなく、自分の作ったものを買ってくれるお客様と向き合うことになります。お客様にかまぼこを知っていただけるだけでなく、社員の意識も変わるのではないでしょうか。自分の仕事について直接感想を言っていただけるのはうれしいことでしょう。熟練の職人も若手も、それぞれ場数を踏んで上手にコミュニケーションをとっていって欲しいですね。
――“こゆるぎ茶屋”や“すず天”でも、製品を作っているところを見れます。
鈴木 自分たちが納得できるものを、胸を張ってお客様におすすめできるような仕事をしたいという気持ちから、オープンな設計にしました。自分がつくっているものに心底自信と誇りを持てれば、一生懸命お客様に勧める気持ちになれます。
――子どもコーナーもありますね。
鈴木 当社のWeb絵本「かまぼこジャパン」のキャラクター“ぐっちゃん”などの商品を充実させてアピールしたいですね。もっと手を加えていきたいコーナーです。
――里のオープンと地域の活性化について。
鈴木 小田原のPRになると思います。小田原には、かまぼこ以外にも伝統的なものが多くあります。里にも寄木細工や鋳物の風鈴を扱う“ちりんちりん”というブランドを設けました。また、“すずなり市場”や本店の造りにもこだわりました。例えば、屋根は瓦の面がきれいに見えるような角度に設計しています。国際観光地・箱根の玄関口として、風情ある様子でありたい。小田原の文化的な質が向上するきっかけになればうれしいです。
――今後の展望について。
鈴木 我々は次の世代にかまぼこのすばらしさを伝えなくてはなりません。そのためには、短期的な活動から得た成果ではなく、長い目で見た循環の中で成果を生み出していかなければならないと思っています。一つの仕事を終えてそこにとどまるのではなく、次へと走り続けていきます。
また、資源の問題もあります。原料が手に入りづらくなっても、かまぼこ屋としてはかまぼこをつくり続けなくてはならないでしょう。そのためにも“世の中に必要とされるかまぼこ”を目指したいです。かまぼこを、周知された存在にしていかなくてはなりません。
――マリンサプリやフィッシュケーキは今後、里に登場することはありますか。
鈴木 もちろんあります。マーケティングをして、里でも求められていれば考えていきます。どちらも何十年後かを見越してつくった商品です。これからの時代、求められる食品だと思っています。だからこそ、いま手を打っているのです。昭和30年代、父は小田原の市街地にあった店を郊外の風祭へ移しました。これは、後の車社会を想定してのことでした。鈴廣には、前を見越して動く気質があるのでしょう。これからも止まることなく、前を見て走り続けます。