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この人に聞きたい:第103回
(週刊冷食タイムス:07/08/07号)

地域とカテゴリーを補完

(株)ナックスナカムラ 代表取締役社長 中村 典正 氏

プロフィール:1991年慶応大卒後、味の素入社。東京支店、本社勤務を経て95年8月退社、翌月ナックスへ。中村博一前社長の次男。67年4月27日生まれ、40歳。

Fチルドで新需要掘り起こす

 今年に入り資本提携や企業買収を積極的に展開するナックスナカムラ。「地域とカテゴリー補完が狙い」と中村典正社長は説明する。新しい形のフローズンチルド事業などで攻勢に転じた同社の方向性を聞いた。

―― 子会社、ベニフローズンの事業統合の狙いは。

中村 重複する得意先も多いことから事業統合で合理化を図ります。両社で別々に使っていた倉庫を共有化するなど相乗効果も少なくありません。今回の統合は第一ステップで、ベニフローズンの営業第一部(市販用)をナックスの営業三部に、営業第二部(業務用)を営業四部として加えただけに過ぎません。ベニフローズンに当社の基幹システム「NAIS(ナイス)」を導入する平成20年に完全融合を図ります。当社自身もまだ一部導入で、完全稼働は来年2月の予定です。

―― 今年に入って資本提携や企業買収が続いている。

中村 2月末に「福島冷販センター」(福島県郡山市、遠藤満社長)へ16.6%出資しましたが、これは営業エリアの補完を目的としたもの。当社から非常勤取締役として財務管理の人間を一人派遣しています。同社はホテルや旅館などを顧客に持つ年商20数億円の卸。5月末に買収した「ワールドデイリーフーヅ」は関西のチルド卸。乳製品やデザートなどのチルド食品を関西のスーパーマーケットに納めている会社で、年商は約30億円。チルド事業を強化する戦略の上で大きな武器になります。6月中旬にはダイエーのチルドベンダー「みくら」の破綻に伴い、同商圏を引き継ぎ旧みくらの社員を20名前後雇用、チルド専従班として全国で約40名体制を確立しました。この分が当社連結に乗るのは約30億円、通期ベースで50億円前後です。

―― 従来にはなかった積極的な展開だ。

中村 この一連の動きは『地域とカテゴリー補完のM&A』と位置付けています。チルド事業の07年度売上高は50億円。これを08年度100億円、09年度200億円を短期目標とし、15年度で1000億円をめざします。チルドといっても守備範囲が広く、後発組の我々がめざすのは『フローズンチルド』。冷凍食品メーカーと一緒にフローズンチルドの商品開発とルート開拓を進めます。低迷している冷凍食品業界にあって、メーカーに役立ちたいという気持ちもあります。昔、ホットケーキなど冷凍食品を解凍してチルド配送していたように、チルドで欲しいという需要はあるはず。年内にも形にしたいですね。

―― 惣菜事業とも連動する。

中村 チルド食品の市場規模は牛乳などを含めて7兆円と裾野が広い。日配売場に限定せず考えれば、水産売場や惣菜売場にも可能性はあります。実際、魚の干物、もずく、和菓子、洋菓子もフローズンチルドで流通しているケースが増えています。これまで冷凍食品で培った経験を生かして、新しい形の低温流通を考えていけばチャンスは無限です。

09年1月期連結1600億円へ 将来の発展に備え積極投資

―― 経営三カ年計画では最終09年1月期にグループ連結売上高1600億円、経常利益1%以上をめざしている。

中村 目標に向かって全力投球していきます。これまでのM&Aでは規模が小さく計画には届きませんが、一歩ずつ着実に、けれどもスピードをあげて実行していくつもりです。現状と方針のギャップとしてCS不足(競争激化)やES不足(給与・休日・福利厚生・教育)があり、事業規模としても約400億円不足している。収益率の底上げも必要です。こうした課題解決に向けて(1)既存ビジネスの業務改革による収益向上(2)新しい事業・温度帯・カテゴリーへの挑戦(3)物流事業の再構築と機能強化(4)NAIS開発による業務改革促進(5)人材への投資(6)コンプライアンス・内部統制遵守――を基本戦略としている。

―― 新しい事業領域への投資が活発だ。

中村 いわゆる先行投資の領域。開発営業部で担当しているのが福島冷販センターとの資本提携を始めとする二次卸戦略です。チルド事業部は新しい低温食品流通への変革に挑戦中。SC事業部はCVS以外の顧客獲得をめざして、外食やメーカーに対して丸紅グループの食材を販売しています。この他、アイスクリームは現状10億円の売上げを50億円にもっていく計画です。一時的に経費はかかりますが、将来の発展をめざす上で避けて通れない投資です。

―― グループの総合力という観点では水産、畜産もある。

中村 冷凍食品売場は当社の原点ですが、ここにしがみ付くことなく水産売場や畜肉売場に提案しているのがチルドであり、フローズンチルド。例えば、水産売場向けに水産品と農産品を組み合わせた「海鮮中華塩炒め」や「白身魚フライ」など簡便性の高い商品を提案しています。畜肉売場でも同様の展開を考えていきます。我々卸も商品知識を磨くため、メーカーに協力していただき定期的な勉強会を行なっています。自分達の知識を高めなければ、得意先への提案営業は無理。卸が単なる「運び屋」で良かった時代は既に終わっています。

―― 来春から本稼働する基幹システム「ナイス」(NAIS)は、商品管理だけではなく営業支援の機能もある。

中村 決算スピードのアップ、個人別の損益管理に加え、営業支援も実践していきます。

―― 今1月期の推移は。

中村 売上げは7%増ですが、利益面は厳しく、予算未達。市販用冷凍食品は厳しい環境ですが、惣菜が健闘。アイスは4〜5月好調だったものの、6月はしんどかった。北海道が少し厳しい状態ですが、他の地域は前年実績を上回っています。昨年10月から本格的にスタートしたチルド事業が下期にプラスオンしてきます。上期はM&Aなどに経費を使っていますが、大手取り組み先の店舗集約が一段落し、利益なき仕事の整理を進めてきましたから改善していくのは間違いないでしょう。9月か10月には沖縄の大手スーパーと共配センターを設ける予定です。

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