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この人に聞きたい:第107回
(週刊冷食タイムス:07/09/04号)

象徴的なMH事件への対応

(株)加ト吉 常務執行役員営業本部長 佐々木 三郎 氏

プロフィール:(ささき・さぶろう)昭和58年丸紅入社、繊維と水産を担当。平成6年加ト吉に。専務東京支社長から新体制で現職に。昭和34年1月愛媛生まれ、東大法卒、48歳。

あの一言で方向決まった

 新社長に交代し、組織、人事が大幅に変わったことは正式に発表されている。しかし内部では何が起き、何が変わり、どの方向に進もうとしているのか。疑問点を様々ぶつけると、佐々木常務は明確に答えてくれた。

――大混乱が重なり、新体制がスタート。内部では何があった。

佐々木 この間、多くの方々にご迷惑とご心配をおかけしたことをまずお詫び申し上げます。義理を欠いたことも多々あったと思いますが、金森社長をトップとする経営陣に切り換わり、組織人事も大幅に入れ換えて新体制がスタートしました。加藤義和オーナーが半世紀にわたり率いてきたカリスマ経営から、パブリックな会社に、家業から企業に変わろうとしているところです。180度の転換なので社内に相当な混乱があるのは承知してますが、個人プレーではなく、組織で動く会社にしようというのが改革の骨子です。

――社員の戸惑いは当然ある。

佐々木 公式言語を観音寺弁から東京弁に、ということですから。

――社外でも戸惑いが続いた。

佐々木 循環取り引き問題が浮上し、不明瞭な財務管理が表面化して決算ができなくなり、上場廃止の危機に追い込まれた。これが最大の問題。しかし、金森社長と小林専務がたまたま加ト吉にいたからこそ、危機に真正面から立ち向かい、乗り越えることができた。この対応を一つ間違えれば、加ト吉はなかったでしょうね。金融行政当局、東証、マスコミ対策…。決算問題を解決した直後にミートホープ事件が発生。これが新生加ト吉の出直しを遅らせた主要因。

――従来の体制ではこの危機を乗り越えられなかった?

佐々木 無理だったと思います。MH社事件が起きた直後、危機対策本部で議論を重ねている場に金森社長が顔を出し、一言「ウチは加害者だという立場を忘れるな!」と念を押していった。これで加ト吉の方向が決まった。翌日の社長のお詫び会見をみのもんたさんに番組で褒めていただきました。「あの社長の下で働きたい」という電話が何件かありました。

――でも、金森社長も小林専務も業界に向けて発信していない。

佐々木 その点は申し訳ないと思っているが、何よりもまず社員の士気を高めようと営業店回りを優先しており、得意先店へのご挨拶と説明もやっと8月下旬から始めた段階。社長が考えを伝えると、現場の社員がみんな元気になります。併行して、品質管理体制の強化、広報体制の充実も進めてます。

――JTが加ト吉を乗っ取った、という受け止め方が強い。

佐々木 社長も専務も確かにJT出身だが、出向ではなく退職して来てますし、JTの出資は5%だけ。しかもJT出身者は2人だけ。う〜ん、説明不足なんでしょうね。むしろ社長、専務は食品会社の理想の形を求めて真剣に取り組んでます。市場に理解していただくには商品が最大のポイント。そこで営業と離して商品統括部を設置し、商品をど真ん中に置いたメーカー本来の形になります。

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