この人に聞きたい:第116回
(週刊冷食タイムス:07/11/06号)
ロシア輸出の認定機関に
(財)日本冷凍食品検査協会 専務理事 前田 重春 氏
プロフィール:(まえだ・しげはる)北大水産学部卒後、同協会へ。趣味は海釣り。昭和24年5月生まれ、札幌市出身。横浜市在住。
技術者の研修施設を拡充
(財)日本冷凍食品検査協会(略称=冷検)の事業領域が、日系企業の海外進出でタイ、台湾、中国と広がっている。エネルギー資源で潤うロシアにも着目、着々と準備を進めている。前田重春専務理事に話を聞いた。
――チャイナフリーが異様にクローズアップされている。
前田 CIQ(中国検験検疫総局)が輸出食品の安全性を徹底するために検査マークの貼付を9月から義務付けましたが、まだ地域差があるようです。既に検査マークを貼付している企業もありますが、延期されたままの地域や、中にはダンボール箱にシールの束を詰めて送ってくるところもあるなど、まだ制度とは言い難い部分も多い。昨年ポジティブリスト制度が施行されたことで、中国当局が慎重になり、荷が止まったまま動かないという例があった。最近でも、中国の大手以外の検査は遅れ気味の傾向があると聞きます。日本の主婦がパッケージ裏面で「中国産」を確認すると、商品を棚に戻す現象が続いているのも事実です。翻って、日本でも老舗和洋菓子メーカーの不祥事が続いています。問題が発覚した企業の中には100年、200年の歴史を持つ会社も少なくない。原材料表示や賞味期限などに関する概念が希薄で、法律的な部分での認識が低いのが問題です。
――ポスト中国で話題を集めているのがロシア。冷検は今春からロシア向けに輸出する水産物・水産加工品の証明書を発行する日本で唯一の認定機関となった。ロシアの可能性をどう見るか。
前田 農水省調査事業の一環として、12月現地に視察団を派遣し、様々な角度から情報を集めてきます。モスクワには寿司店を中心とする日本食レストランが1500店あると言われています。数年前までは600店でしたから倍増以上です。ロシアはエネルギー資源で国全体が潤い、給与水準も上昇を続けています。鯖、にしん、鮭がロシアの三大水産物ですが、近海のさんまや鯵なども燻製にすれば大いに可能性があるでしょう。日本が国際市場で水産物を買い負けているというのは周知の事実ですが、裏返せば水産物の需要が世界的に広がっているということ。ヨーロッパやアフリカでも水産物が売れています。
――日本冷凍食品検査協会という名称から離れた事業だが。
前田 うちの前身をご存じない方は、皆さん同じような事を言われます。冷検は昭和24年輸出冷凍水産物検査協会として発足、27年日本冷凍水産物検査協会となり、現在の名称となったのは35年から。米国に冷凍みかんを輸出する事になった時、水産物検査協会では不自然だと名称変更したのです。
――横浜事業所増築の狙いは?
前田 試験設備の拡張と、国内外の技術者研修施設の充実です。どんな検査でも、誰が担当しても同じ結果が出なければいけない。そのためには世界の技術者が同じ目線を持たなければなりません。海外の研修生も受け入れます。