この人に聞きたい:第117回
(週刊冷食タイムス:07/11/13号)
課題は首都圏の深耕
ヤヨイ食品(株) 代表取締役社長 藤嶋 照夫 氏
プロフィール:(ふじしま・てるお)昭和47年4月伊藤忠商事入社。タワーベーカリー社長、トーヨーライス副社長を務め今年6月から現職。大阪外語大卒。昭和23年9月21日生まれ、59歳。
年明け後の値上げ浸透を
ヤヨイ食品の藤嶋照夫社長は就任して5カ月。まず地域問屋の細やかな物流機能に「驚いた」と語る。就任直後は製造ラインのカンパニー化に着手し、10月の組織変更では組織を細分化している。いずれも「きめ細かさ」がキーワードといえそうだ。
――就任して5カ月を経た。
藤嶋 得意先を挨拶回りして驚いたのは地域卸がしっかりとした物流機能を持っていること。あのきめ細かさは異業種にまねできません。当社はその細かさに対応できるインフラの基礎はあります。あとは製販が複合的に取り組めればもっと良くなると思います。末端客は何が売れるかがわからなくて悩んでおり、しかも他店と違うものを要求してきます。共同で開発していく必要があります。
――生産部門も対応が必要。
藤嶋 超大手の工場のように連続で同じ商品を作り続ける事ができればいいですが、それは夢であり希望。清水工場も気仙沼工場も現状で大量生産型ではなく手作り風に作るレイアウトです。気仙沼は人も集まりやすい。首都圏にある工場ならとてもできません。
――上期の状況は?
藤嶋 9月が非常に良くなかった。生産量は変りませんが、安価な商品が売れて単価が下がっています。収益性も落ちました。11月には復活しましたが、原材料の値上がりが相次ぎ、あちらこちらからパンチが飛んでいるという感じです。
――製品の値上げについては?
藤嶋 通知だけで「はいそうですか」と応えてくれるわけもなく、年明けから本格的に浸透していくと思われます。値上げしても売上げが下がっては意味がありません。だから営業には値上げが通らないなら120%売れと言っています。決して売上げを追うという意味ではないのです。損益分岐で考えるということ。
――コスト削減は限界だ。
藤嶋 安全安心は空気のように金にはならないが大切なもの。当社はクレームがほとんどない。安全安心の価値を認めてほしい。CVSや外食店とはちゃんと話が伝わる体制になっていますが、量販の場合は不特定多数の消費者に伝わらない。しかも時間がないため冷食は売場に並べるだけ。アイキャッチをつけるなどもっと客とのコミュニケーションをとってもらえれば良さをわかってもらえるのに残念です。その意味で今後はリージョナルスーパーのほうが可能性を持っていると考えます。
――初年度の方針は?
藤嶋 就任時に発表した各ラインへのカンパニー制移行の方針は変わっていません。各ライン長が、自分たちが作っている商品がどこでどのような客に利用されているかまで把握できるようにしました。その後は首都圏の強化。今は首都圏の売上げが3分の1に満たないですから、可能性は残っています。10月の組織変更ではCVS、外食、量販などの分野別に細分化しました。それまでは量販とCVSが同じ部でしたが、それでは両方に手が回らない。介護食の部隊も組織的にしました。