この人に聞きたい:第137回
(週刊冷食タイムス:08/04/08号)
試練のとき、全社一丸で乗り切る
葛ノ洋 専務取締役 石川 泰久 氏
プロフィール:(いしかわ・やすひさ)環境変化が激しく、難しい時代が続いているが、安定収益をあげる事業基盤の確立が急務。17年4月から専務。東京水産大学卒、62歳。
委託先集約、品質管理を万全に
中国製冷凍餃子事件以来、業務用は市販用に比べ少ないものの影響は出ている。業務用専業の極洋、石川専務は中国の生産体制の見直しを進める一方、一部商品を国産品に切り替えるなど対応を急いでいるという。
――中国のCIQの検査が進まず実質的な輸出差し止め。特に山東省の対応が厳しい。
石川 その通りですが、以前はまったく動かなかった検査業務が直近になって始まったとの報告が入っています。遠からず入荷できると期待しています。
――今回の中国製餃子事件の影響は業務用でも出ている?
石川 勿論です。大手外食チェーンの中には中国製の全面拒否を打ち出したところも少なくない。その後、安全が証明されれば使うと変わっています。影響は間違いなく出ていますが、当社にとって今のところウエートが小さいので、まだ救われています。
――協力工場の対応に変化は?
石川 中国の協力工場は山東省の有力数社と「極洋会」を結成し、当社と協力工場のタテの交流、さらに協力工場同士のヨコの連携・情報交換を定期的に行なうなどコミュニケーションを高めてきた。今回のような事件が起きて、改めてこれまでやってきたことが間違っていなかったと感じています。
――委託生産の対応を厳格化せざるを得ない。
石川 当社でも農薬検査が急増しています。5種類の農薬全部の検査を要請されるなど安全確認のために大きなコストがかかってきている。顧客の要請にも是々非々で臨まないと費用と時間が途方もなく必要となる。
――現地体制はどうなる。
石川 山東省の青島事務所にQC(品質管理)の常駐者が5名程いますが、主力委託先には常駐して万全の品質管理を行なっている。それでも目の届く範囲は限られる。今回の事件を機に扱いの小さい委託工場は集約して万全の管理体制を確立する方針です。
――国産品ニーズが強い。
石川 たまたま境港の協力工場で生産するあじかつ、いわしかつを発売したばかりだが、引き合いが強い。ただ、国産に固執されても急場の供給は間に合わない。冷凍食品業界は従来どおり中国依存の基本線は変えられないのでは。
――当面の懸念は。
石川 中国の出荷停止で国内在庫が少なくなり、4月以降の需要期に売れ筋商品が欠品をしないかと心配しています。4月は通常月の五割増は売れるので欠品は困る。品切れに備えて対応を指示していますが、前述の通り国内生産も容易ではないので困っている。
――今期を一言で総括すると。
石川 「変化の時代」。変化要因は安全安心であり、原料資材の高騰です。魚介類、畜肉類とも三〜四割アップした。当社にとっても事業収益が厳しい。コストアップ要因が目白押し。商品の値上げは不可避ですが、末端の顧客心理はいまだにデフレ基調にあり、スンナリといきそうもない。ただ、規格変更などで小細工をせずに値上げ要請をしていくつもりです。